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資産形成

新NISAで1800万円枠を超えたら課税は不可避? 負担を減らす2つの手段

投資初心者・経験者を問わず注目を集めている「新NISA」。制度について、現役銀行員・証券アナリストで個人投資家でもある浅見陽輔氏が、極限まで分かりやすい表現で解説します。今回のテーマは「換金のベストタイミング」と「1800万円枠を使い切った場合の対応」です。

前編の記事【新NISAで投資した資産、いつ「換金」すればいい? ベストなタイミングは…】では、資産を換金する時の考え方について解説しました。続いて、少し⽬線を上げた話。「新NISAで、投資枠1800万円を使い切ったらどうするか?」というテーマについて、真剣に考えていきます。

新NISAの投資枠1800万円を使い切り、それ以上投資すると……残念ながら、1800万円を超えた分の配当⾦や売却益などに、20.315%の税⾦がかかってしまいます。もし、あなたが億単位で投資する資産家であれば、この課税はまず避けられません。

しかし、投資額が1800万円を超えるか超えないか、という層であれば、もう少しだけ打つ⼿が残っています。その⼿段は、⼤きく分けて2パターン考えられます。


 

①配偶者の非課税枠を使う

最も簡単な方法は、「配偶者の新NISA枠を使う」ことです。⾃分だけでなく、妻や夫の新NISA枠も取りにいく。夫婦合わせると、1800万円×2⼈分、つまり3600万円までの投資が⾮課税となります。

⾃分の投資枠1800万円を使い切ったあと、わざわざ税⾦がかかるような投資をするのは非常にもったいない。ですから、配偶者の枠も積極的に狙いにいくのです。

むしろ最初から、「夫婦の枠、合わせて3600万円を埋めにいく」ぐらいの考えで、ちょうど良いかもしれません。最初から⾃分の枠だけを使うのではなく、夫婦ともに、コツコツと新NISAで投資していく。

資産形成をするには、家族の理解を得て、同じ⽬標に向かって協⼒することが必須です。そういう意味でも、夫婦それぞれの資産を積み上げることは有効でしょう。では、

・独⾝で、新NISA枠上限の1800万円を使い切った⼈
・夫婦で、新NISA枠上限の3600万円を使い切った⼈

は、どうすればいいか。先に⾔っておくと……これ以上投資する場合、税⾦の発⽣は避けられません。しかし、払う税⾦を少しだけ減らす⽅法があるのです。

②最終手段として
「資産の入替」を行う

 払う金額を少しだけ減らす方法、それが、二つ目の手段である「資産の⼊れ替え」です。資産を買う目的は個人のスタンスによって様々ですが、私の場合は主に3パターンに分類しています。

①資産を増やす投資=株式型の投資信託
②資産を守る投資=分散型の投資信託
③今を楽しむ投資=優待狙いの株式

例えば積極的に資産を増やしたい⼈であれば、①を60%、②を20%、③を20%……など、⽬的に合わせていろんな商品を買うことができます。

ところで、この①~③の投資。最も利益が出やすいのは、どのパターンでしょうか。答えは当然、①の投資です。「資産を増やすため」の投資なので、期待リターンは⾼くなります。そこで、例えば

①資産を増やす投資:1000万円
②資産を守る投資:400万円
③今を楽しむ投資:400万円

と、新NISA枠の【1800万円】を使い切った⼈。この⼈がさらに「資産を増やす投資」をする場合、どうすればいいのでしょうか。その答えは、「②や③の資産を新NISA口座から売る+新NISA口座で、新たに①の投資をする」という⾏動です。少しややこしいので、詳しく説明していきます。

まず、「②資産を守る投資」や「③今を楽しむ投資」は、そもそも利益が出にくい。なので、もし課税⼝座(NISA制度の外、税⾦がかかる口座)に⼊れていても、そこまで⼤きく税⾦は発生しないことが多いのです。

⼀⽅、「①資産を増やす投資」は話が別です。資産の値上がりを狙うので、たくさん利益が出れば、その分税⾦もガッポリ取られます。したがって、優先的に新NISAに⼊れるべきは「①資産を増やす投資=株式型の投資信託である」というのが結論です。

新NISA枠がいっぱいになりそうなら、このような期待リターンが高い商品を優先的に⼊れる。逆に、それ以外の商品はNISA枠の外で運用する。少しでも節税効果をアップしたいなら、このような細かい⾏動が効いてきます。

注意点
相場全体が⼤きく下がる局⾯では、この⾏動が裏⽬に出るケースもあります。その理由は、NISA口座では損益通算ができないからです。

NISAを使わず投資した場合、損失と利益を合算して「今年はプラマイゼロでした」と申告し、税⾦を抑えることができます。しかしNISA制度で投資した商品は、この損益通算ができません。つまり、NISA内で損が出ても、利益との相殺ができない、というデメリットがあるのです。

利益が出れば、まったく関係のない話ですが……このデメリットも理解した上で、ぜひ有効にNISAを活用していきましょう。

執筆者

浅見 陽輔(あさみ ようすけ)
銀行員・証券アナリスト

大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科を卒業後、2013年に銀行に就職。10年のキャリアで、投資運用、リスク管理、法人・個人向け融資、システム部門を経験。証券アナリスト、FP2級、簿記2級、税務上級など20種類の金融系資格を保有。趣味は優待株投資と筋トレ。本業の傍ら、Kindle(電子書籍)作家としても活動中。代表作に『図解 新NISA』『トクする株主優待の選び方』『最後のジュニアNISA』『絶対に続く筋トレ』などがある。Twitterアカウントは【@you_def】。